企画書が通らないのは、企画が悪いからではない

スタンプラリーをやることは決まった。あとは企画書を書いて社内・庁内で承認をもらうだけ——ここで止まってしまう相談は少なくありません。そして差し戻される理由は、たいてい企画の中身ではなく書き方にあります。

よくあるのは次の3つです。

この記事では、スタンプラリーの企画書に必要な項目を11個のテンプレートとして並べ、それぞれ何をどう書けばいいかを解説します。そのまま見出しとして使えるようにしてあるので、上から順に埋めれば1本の企画書になります。

企画書の全体構成(11項目テンプレート)

まず全体像です。A4で2〜4枚、パワーポイントなら8〜12枚が目安。読む人は忙しいので、1項目1メッセージで簡潔にまとめます。

#項目書く内容
1件名・概要企画名、開催日、対象エリア、一言サマリー
2背景・課題なぜ今これをやるのか。解決したい問題
3目的・目標(KPI)達成したい状態と、測る数字
4企画概要参加方法・スポット数・達成条件・景品
5ターゲット誰に来てほしいか。人数の見込み
6実施方法(運営手段)紙かデジタルか。使うツールと選定理由
7スケジュール準備から報告までの日程表
8体制・役割分担誰が何を担当するか。関係先との調整
9予算費目別の内訳と総額
10リスクと対応想定されるトラブルと備え
11効果測定・報告終了後に何をどう報告するか

順番は変えて構いませんが、2→3→4(課題→目的→企画)の流れだけは崩さないでください。「課題があり、それを解決するための目的があり、そのための手段がこの企画」という筋道が通っていれば、細かい部分は質問で補えます。

1. 件名・概要

冒頭で全体が分かるように、1〜2行で要約します。決裁者はここだけ読んで判断することもあります。

2. 背景・課題

ここが弱いと、以降が全部「やりたいからやる」に見えてしまいます。事実ベースで、解決すべき問題を1〜3点に絞って書きます。

過去に同様のイベントをやっているなら、その実績と反省を必ず入れてください。「前回はこうだった、だから今回はこう変える」という書き方は、企画書の説得力を大きく上げます。

3. 目的・目標(KPI)

いちばん重要な項目です。目的(達成したい状態)目標(測る数字)を分けて書きます。

目的(定性)目標=KPI(定量)
エリア内の回遊を促進する参加者1人あたりの平均訪問スポット数 3.0以上
参加店舗への送客参加者数 1,000人/スポット別取得数 各店100件以上
企画としての完走率を確保する達成率(景品交換に至った割合)40%以上
次回以降に使えるデータを残す参加者データのCSV取得、時間帯・曜日別の分布を記録

数字の根拠を聞かれたときのために、算出の考え方も一行添えます(例:「昨年の同時期の来街者数◯人の◯%が参加すると想定」)。目標値は達成可能な範囲に置いてください。高すぎる目標は、終了後の報告で自分の首を絞めます。

どの指標を選ぶべきか迷う場合は、スタンプラリーのKPIと効果測定で指標の一覧と集計方法を整理しています。

4. 企画概要

参加者から見た「どういうイベントなのか」を書きます。ここは箇条書きで十分です。

達成条件は「全スポット必須」にしないほうが参加率は上がります。段階的な特典(3か所で参加賞、7か所で抽選応募など)の組み方はスタンプラリーの景品アイデア20選にまとめています。

5. ターゲット

「誰でも」と書くと企画がぼやけます。主ターゲットを1つ、副ターゲットを1〜2つに絞ります。

ターゲットが決まると、スポットの選び方・景品・告知媒体が自動的に決まります。逆に言えば、ここが曖昧だと以降の項目が全部ふわっとします。

6. 実施方法(紙かデジタルか)

決裁者が「なぜその方法なのか」を聞いてくる項目です。比較表を1つ入れておくと、質問がほぼ出なくなります。

比較軸紙の台紙QRコード(デジタル)
準備台紙・スタンプ台の印刷と各店配布スポット登録でQRが自動生成、印刷して掲示
参加のきっかけ台紙を受け取る必要があるその場でQRを読むだけ。通りすがりでも参加可
集計手作業。数百件で数時間規模自動集計。CSVで出力
参加者データ残らない参加数・スポット別・時間帯別が記録される
開催中の連絡不可お知らせ配信(メール・ポップアップ)で全参加者へ
部数の上限印刷部数が上限。増刷は時間と費用上限なし

デジタルを選ぶ場合は、選定理由を1〜2行で明記します。「集計工数の削減と、次回企画に使えるデータの取得が主目的。参加者側のハードルを上げないため、アプリのインストールと会員登録が不要なブラウザ型サービスを採用する」といった書き方です。

ツールの選び方の観点はスタンプラリーアプリの選び方に、紙からの移行手順は紙のスタンプラリーをデジタル化するメリットと移行手順にまとめています。実際の参加画面を見せたほうが早いので、企画書にデモページのURLを載せておくと、説明の手間が減ります。

7. スケジュール

準備から報告までを表にします。企画書段階では日付が確定していなくても、「開催◯週間前」の相対表記で構いません。

時期作業担当
8週間前企画承認、予算確保企画担当
6週間前参加スポットへの依頼・確定、景品の選定と発注企画担当・営業
4週間前システム設定、メインビジュアル制作、プレスリリース送付企画担当・制作
3週間前QRコード発行、ポスター・POP入稿、参加店への説明資料配布企画担当
2週間前掲示物の設置、SNS告知開始各店・広報
1週間前関係者によるテスト参加、当日対応マニュアル配布全員
開催期間進捗モニタリング、途中リマインド配信企画担当
終了後2週間景品発送・交換、データ集計、報告書作成企画担当

システム側の設定は短時間で終わるため、実際のボトルネックはスポットへの依頼印刷物の入稿です。そこを逆算した日程にしておくと、現実的な計画に見えます。告知の詳細な組み立てはスタンプラリーの集客・告知方法を参照してください。

8. 体制・役割分担

「誰がやるのか」が書かれていない企画書は、承認後に必ず揉めます。少人数でも明記します。

外部委託する範囲がある場合は、ここで線を引いておきます。「システムは外部サービスを利用(設定は自社で実施)」のように書けば、追加の人件費が発生しないことも同時に伝わります。

9. 予算

総額だけでなく、費目別の内訳を必ず出します。内訳があると「ここを削れば通る」という議論ができ、差し戻しになりません。

費目内容金額の考え方
システム利用料スタンプラリーの運営システム月額制なら開催月のみ。Stampiaは初期費用ゼロ・月額1万円から
景品費参加賞・抽選景品想定参加者数×単価。達成率を掛けて見積もる
印刷費ポスター、POP、のぼり、チラシスポット数×枚数。予備を1割
デザイン費メインビジュアル、掲示物内製なら0円と明記
広報費広告出稿(実施する場合)プレスリリース・イベントカレンダーは無料
人件費当日対応、景品交換既存スタッフで対応できるなら「追加なし」と書く
予備費総額の5〜10%

比較検討したことを示すため、他の選択肢と比べた金額を一行入れると通りやすくなります。「専用アプリの開発は初期費用が数十万円規模となるため、月額制のブラウザ型サービスを採用し初期費用ゼロで実施する」といった形です。費用の相場観はQRコードスタンプラリーの費用相場と料金の考え方にまとめています。

なお、有料イベントとして参加費を徴収する構成にする場合、Stampiaは決済(Stripe連携)にも対応しているため、収入側も企画書に組み込めます。文化祭など学校・教育目的の利用については無料プランを用意しているので、学生団体の企画書では費用欄をゼロで書けます。

10. リスクと対応

抜けやすいのに、決裁者がいちばん気にする項目です。「起こりうること」と「その時どうするか」をセットで書きます。

想定されるリスク対応
参加者が想定を大きく下回る開催中の取得数を見て掲示を追加、リマインド配信で再訪を促す
参加者が想定を大きく上回り、景品が不足景品は先着数を明記。追加分の調達先を事前に確保
QRが読み取れない・電波が届かないオフラインでも読み取りを受け付け、通信回復時に同期する仕組みを使う
QR画像の使い回しなど不正な取得取得回数の制限と不正検知の設定を有効化
荒天・中止中止判断の基準日と告知手段を事前に決めておく
スマホを持たない参加者への対応紙の台紙を併用する枠を少数用意

Stampiaは電波の弱い場所でも読み取りを受け付けて後から同期するオフライン対応(PWA)と、取得回数の制限などの不正対策を備えています。不正対策の考え方はスタンプラリーの不正対策で詳しく解説しています。

11. 効果測定・報告

「やって終わり」に見えない企画書にするための項目です。終了後に何を報告するかを、企画段階で宣言しておきます。

ここを書いておくと、企画書の段階で「効果が測れる企画である」ことが伝わります。紙の台紙では書けない項目なので、デジタルを選ぶ理由の補強にもなります。

稟議・上申でよく聞かれる質問と答え方

企画書を出した後に飛んでくる質問は、だいたい決まっています。あらかじめ答えを用意しておくと、その場で承認まで進めます。

質問答え方
「それで結局いくらかかるの?」総額と、削れる費目・削れない費目を即答できるようにする
「効果はどう測るの?」KPIとデータの取得方法をセットで答える
「他の方法と比べたの?」紙/専用アプリ/ブラウザ型の比較表を用意しておく
「うちの人員でまわるの?」体制表と、外部サービスに任せる範囲を示す
「失敗したらどうするの?」リスクと対応の表を見せる。中止判断の基準まで決まっていると強い
「参加者は使いこなせるの?」アプリ不要・会員登録不要であることを説明し、デモを実際に見せる
「間に合うの?」スケジュール表で、ボトルネックがどこかを説明する

とくに最後の2つは、口頭の説明より実物を見せるほうが早いです。会議の場でスマートフォンからデモを読み取ってもらうと、それだけで話が進みます。

よくある質問(FAQ)

Q. 企画書は何ページくらいが適切ですか?

A. A4で2〜4枚、スライドなら8〜12枚が目安です。決裁者は忙しいので、詳細は別紙(見積書・スケジュール表・スポット一覧)に分け、本編は要点だけにします。冒頭の概要だけで判断できる構成が理想です。

Q. 目標の数字はどう決めればいいですか?

A. 前回実績があるならそれを基準に、なければ「対象エリアの来街者数×想定参加率」で置きます。参加率は控えめに見積もって構いません。目標は達成報告の基準になるので、背伸びした数字を書くと後で困ります。

Q. 予算がまだ確定していない段階でも書けますか?

A. 書けます。費目を並べて「概算」と明記し、幅(例:15〜25万円)で示せば十分です。むしろ内訳のない総額だけのほうが差し戻されます。システム利用料のように月額が公開されているものは、そのまま金額を入れられます。

Q. デジタル化を提案したいのですが、参加者の高齢化が心配だと言われます。

A. 「アプリのインストールが不要」「会員登録が不要」の2点を明記してください。ブラウザで開くだけの方式なら、カメラでQRを読み取ってその場で参加が始まります。心配が残る場合は、紙の台紙を少数併用する案を併記すると通りやすくなります。

Q. 企画から開催までどのくらいの期間が必要ですか?

A. スポットへの依頼と印刷物の準備を含めると6〜8週間が標準です。システム側の設定は短時間で終わり、Stampiaは即日から準備を始められるので、日程の制約になるのは景品の発注と印刷物の入稿です。

Q. 開催中に企画を変更することはできますか?

A. デジタルであれば、達成条件の見直しや特典の追加を告知だけで実施できます。参加者へはお知らせ配信(メール・アプリ内ポップアップ)で伝えられるため、途中の軌道修正が可能です。企画書には「開催中のモニタリングと調整」を項目として入れておくと、後から動きやすくなります。

Q. 報告書はどう書けばいいですか?

A. 企画書のKPIをそのまま並べ、実績値と差分、要因を書くのが最も伝わります。管理画面の数字をCSVで出力すれば、集計作業はほとんど発生しません。詳しくはスタンプラリーのKPIと効果測定を参照してください。

まとめ

スタンプラリーの企画書は、課題→目的(KPI)→企画→手段→予算→リスク→報告という筋道が通っていれば通ります。特別な文章力は必要ありません。

詰まりやすいのは3か所です。目的を数字に落とすこと、予算を費目別に分けること、リスクと対応をセットで書くこと。この3つが埋まっていれば、残りは事務的に書けます。

そして、実施方法をデジタルにすると企画書そのものが書きやすくなります。集計工数の削減という明確なメリットがあり、効果測定の項目を具体的に書け、初期費用ゼロで始められるため予算の説明も単純になるからです。まずは11項目の見出しだけをファイルに並べて、上から埋めていってみてください。